不貞の損害賠償を請求された場合、
自分の負担割合に応じた減額は認められるか? Rikon

不貞の場合、例えば既婚男性が積極的に主導し不倫相手の女性がそれほど積極的ではなかったという場合、相手の配偶者からの慰謝料請求に対して、減額を主張することはできるでしょうか。
一般的には、不倫の慰謝料の支払い義務は、相手の配偶者に対して、男女2人で苦痛を与えたと見て、「共同不法行為」と考え、共同不法行為の場合、「各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されない」とする最高裁判例があります。
これは交通事故に関する判断ですが、近時の下級審の裁判例の中にもこれに沿って、「夫婦の一方として婚姻生活を維持する義務を負うAが主位的に責任を負い、被告の責任は副次的であるとの点も、原告に対する上記権利侵害が被告とAの共同不法行為によって生じている以上、原告に対する慰謝料を減額する事由として考慮することは、相当ではない」とするものもあります。
したがって、配偶者の女性に対して、不倫をした女性が自分の寄与度が少ないことを理由に減額を主張することは困難なようにも思えます。

負担割合によって、妻に払った慰謝料の返還を求めることが可能

しかし、共同不法行為をした者の間、つまり不貞をした男女の間においては、寄与度に応じた負担割合によって、妻に払った慰謝料の返還を求めることが可能と考えられますので(これを「求償権」といいます。)、仮に、不倫によって婚姻関係が破綻したわけではなく、相手方の家計が共通するような場合、仮に不貞の相手から慰謝料を200万円取っても、夫がその不貞相手に150万円返さないといけないとすると、手元に50万円しか残らない計算になりますので、夫に対する求償権を主張して実質的に減額交渉ができる場合があります。
さらに、近時の下級審の判例の中には、理屈はともかく、「被告は、原告に対し、共同不法行為責任を負うこととなるが、その主観的態様はAと異なり過失にとどまるから、賠償責任を負うべき慰謝料額もAと差をもうけることが相当である」としたものもあります。

このように、不貞の慰謝料については事案によりまた担当する裁判官の価値判断により、結論がどうなるか千差万別、予測困難な面もありますので、おかれた状況に応じて有利な裁判例を援用するなどして交渉を進めることが肝心です。

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