遺言を専門家に作成してもらうと遺言執行者の指定も同時にしていることが多いと思います。実はその遺言執行の費用がなかなか高額で、旧日弁連の基準によると、例えば3000万円の遺産の場合2%+24万円とされています。遺産が3000万円あった場合、その遺言の執行費用は84万円という計算となります。
しかし、遺言によって自分の子どもなど相続権のある人に遺産を継承する場合、「誰々に相続させる」という遺言書を作成するのが現在の主流ですが、このような遺言は、「遺産分割方法の指定」といい、その遺言だけで遺産分割協議が成立したのと同じ扱いとなります。
遺産分割協議が成立したときに、自分が取得することになった預金の払い戻しを別の執行者を立ててやってもらう人はいません。それと同じで、「相続させる」という遺言があれば、遺言執行者がいなくても、預金の解約など自分でできることです。わざわざ預金の解約をしてもらうだけで、例えば3000万円の預金があった場合、その2%+24万円=84万円の執行費用を払ってやってもらう必要があるでしょうか。または、3000万円の不動産があった場合、司法書士さんに登記名義の変更をお願いすることが多いでしょうが、そのお願いをするだけで、司法書士の費用とは別に、執行費用として84万円を支払う必要があるでしょうか。
実は遺言について執行者が絶対に必要な場合は、相続人の廃除や遺言による認知など限られており、認知や廃除を遺言に盛り込む必要がある場合はほとんどありません。実際に遺言執行者を指定する実益がある場合は、相続人として遺産を受けずに、相続人以外の立場で遺産を受ける遺贈の場合くらいでしょう(その遺贈の場合ですら遺言執行者なしで遺言の内容を実現することは可能です。)。
相続人への継承の場合、「相続させる」という遺言が主流となっている現在の日本であえて遺贈による遺言を作ることはほとんどありません(当事務所ではあえて遺贈による遺言を作成する場合があります。)。
遺言を作成する場合は、遺言執行までお願いする必要があるのか、執行費用の計算根拠となる遺産の額はどの範囲なのかについてよく相談しておきましょう。